インフラにスピードを
2025.2.7
目次
1.過去の常識 「Wi-Fiは調子が悪くて当たり前」から創業
Wi-Fiというのはこれまで、月に何回かは調子が悪くなり、その度に仕事やゲーム、動画の視聴に支障が出るというのが常識でした。中学生だった頃、私はオンラインゲームが大好きでその当時出たiPadで毎日寝る間も惜しんでゲームをしていました(そしてプログラマとしても働いていました)が、電子レンジを動かすたびに下にある無線LANルータの電波が止まって困っていました。
そこで「インターネットの調子が悪い」という現象を何年もかけて分析した結果、不具合にはおよそのパターンがあり、大抵は再現性があって解決できました。私は現場を見るたびに(当時は専門外でしたが)原因を分析して改善する事にしていました。すると、行く先々ですごく感謝されるし、気付いたら仕事としてお金がもらえるようになっていました。そして今や集団で再現性の有るこれらの問題に立ち向かうことが出来るようになったというのが創業の経緯です。
2.時の変化に追いついていない通信業界
インターネットの世界では「ベストエフォート」という言葉を盾に、「繋がっても繋がらなくてもいい」というすごい言い分がまかり通っています(これは通信大手S社のナントカAirのサービス担当者の一言一句違わぬ発言です)。これはこれまでの社会に「新しい技術だから不安定で当然」という共通の認識があったからです。しかし、今やインターネットは生活基盤です。走るか分からない自動車なんて誰も買わないのに、インターネットは生活に必要だから仕方なく契約する時代です。今のインターネットは電話の信号すらも通って行くわけで、110番通報や119番通報が急に出来なくなっては困ります。2000年から四半世紀も経った通信の世界では他にも様々な問題が噴出しています。以下はその例です。
(1)IPv4アドレスが枯渇し、社会インフラとしてのインターネットの存続が脅かされているが、旧規格と互換性があって使いやすい規格を普及出来ていないので対応が遅々として進みません。これを克服するためには言葉の力と研鑽され続けた技術、そして強い信念を持ち、国際的な規格を策定普及することが必要だと考えています。
(2)工事の人手が足りず、通信サービスの安定的提供が難しくなってきている。情報通信業と工事は切っても切り離せない関係にあります。しかし、工事の分野では、これからは人手不足の時代なのにデジタル化が進まず、進んでも極めて大企業的な「システム化」によって人手不足が解消しない(様々な部署の利害関係を取り入れた結果、システム化そのものが目的化し、却って業務が煩雑になるなど。)という困った現実があります。水道分野では機械での工事・点検もかなり進んでいますが、元々国の事業だった事もあり、通信分野はデジタルの利活用でかなり遅れを取っています。だからこそ、技術者は通信の知識だけに興味関心を絞り、それだけ知っているようではいけないのです。技術者たるもの、常に進歩研鑽を続け、システムや装置、工事などのやり方についても知っておく必要があると考えています。
(3)先進国に比して日本だけデータ単価が高くなる地理的・構造的な事情がある事は実はあまり知られていません。日本は島国なので、とんでもない距離の海底光ファイバを敷設するというハンディキャップを諸外国に対して負っており、しかも人口も少ない(いま世界の覇権を取っている英語が公用語でもない)ので、通信大手が日本国内だけで営業し、略してアルファベット4文字のようなキャンペーンを展開し、いつまでも5年後の未来を作っているようでは根本的に通信料金を下げ、諸外国に太刀打ちすることは出来ません。外資企業や国内食品メーカーのように外国でも事業を展開し、高速通信の研究や規格策定に対してもう少し真面目に取り組み、少なくともアメリカと同じだけトランジットのメガ単価を下げる(卸単価ベースで大体3分の1くらいになる)努力をしたいのが私の考えです。
3.インフラにスピードを
電気通信事業は規制業種なので私たちも許認可を取るのには大変な苦労をしました。具体例には総合通信局では「北海道地区では40年以上前例がない」、小樽市の保健所では「小樽市でそんなことを言っている人は他にいない」、北海道の国立大学では「今は昼休みであなたは私の気分を害したからダメだ」などと言われた事があります。私たちはビール券や商品券はあげません(ビール会社のスポンサーはしていますがそれとは別です)。工学部出身ですが法律や根拠、解釈を確認して「ここにこう書いてあるじゃないか」とか言って最後は霞が関の役人と話合いをする。そして1~2年くらい問答して「確かに君の言うことは正しい」などということで、やっと認可が下りたり法律が変わったりするという感じです。
新しい世代の私たちですらもこんな感じですので、通信の最大手の会社はもっと保守的な考え方で、官僚以上に官僚的な組織とも言われているそうです。やってみると何かルールや仕組みを改良するというのは思ったよりも大変でした。しかし、私たちには信念があります。それは「ダメ」ではなく、こうやったら出来るという道筋を示す事です。誰かにとって嫌なことを改善して暮らしをラクにする、全体で利益を衡量して「それおかしいんじゃない?」という事は必ず改良します。Wi-Fiが止まったら嫌ですし、保守契約を結んでいるのに1週間も2週間も直らなかったら困ります。ネットを申し込んで1ヶ月も2ヶ月も待たされるのは嫌ですよね。人によってはそもそもネットの事なんか勉強したくないという人もいるかもしれません。こういう嫌なことを全部変えたいと思っています。
何かをやろうとすると、必ず否定してくる人がいます。すぐに合理的根拠もなく「国民の税金で建てた局舎で自前工事をやってはならん」とか、「必ず○○が保証できる訳ではないだろう。だからダメだ」とか「お前たちは既存サービスをちょっと改善しただけで全くイノベーティブじゃない」とか、揚げ足取りのようなことを言ったりします。でも、これから社会を変えるのはそんな机の前でふんぞり返っている頭でっかちジジイではないと思うのです。腕組みしているだけでは局舎は建たないし、陸運局の役人が屁理屈をこねくり回しても緊急自動車は速く走らない、保健所がふんぞり返ったって旅館の経営は回らんとです。
私たちの存在意義は、社会の矛盾や理不尽、嫌だと感じた事を技術・数字・言葉の力で打破してちょっとずつ良い世界へ変えていこうとすることだと考えています。伝統的で古い業界で新しいことをやろう、他の会社に出来ることはもっと上手にやろう、そしてこれまで一律「ダメ」と言われていたことを少しずつOKに変えようとすること自体が私たちの使命です。この考えを一言で表すのが「インフラにスピードを」という言葉です。
「いまさら固定電話かよ」「光回線ってどこも変わらないんだよね・・・」とよく言われます。でも皆さん私たちのサービスを使うとまるで感想が変わります。「若いのに頑張ってるね」「全然違うね」「いまのシステムは全部御社に変えるよ」 これからもこういう感想を頂けるよう、インフラ屋さんなのに、システムや装置、工事の事も分かっていて、しかし速度も追求しているような「困った」会社であり続けます。
日本先進通信株式会社
代表取締役 松浦求磨


