インフラにスピードを
2025.4.6
目次
1.過去の常識 「Wi-Fiは調子が悪くて当たり前」を変えよう
Wi-Fiというのはこれまで、月に何回かは調子が悪くなり、その度に仕事やゲーム、動画の視聴に支障が出るというのが常識でした。中学生だった頃、私はオンラインゲームが大好きでその当時出たiPadで毎日寝る間も惜しんでゲームをしていました(そしてプログラマとしても働いていました)が、電子レンジを動かすたびに下にある無線LANルータの電波が止まって困っていました。
そこで「インターネットの調子が悪い」という現象を分析した結果、どうやら無線に関するトラブルが原因の90%以上を占めていることが分かりました。なので、これをパターン化すれば「Wi-Fiは調子が悪いものだ」という常識を変えられると思って起業したのが今のネットワーク事業の創業経緯です。
2.通信業界で拾えていないニーズを拾う
インターネットの世界では「ベストエフォート」という考え方があります。すなわち「繋がっても繋がらなくてもいい」という事なのだそうですが(通信大手S社のナントカAirの担当者が電話口で言っていました)、そんないい加減な認識で事業を運営しているのは通信業界だけです。
夜中にインターネットが繋がらなくて電話を掛けてみたら「お電話ありがとうございます。当社の営業時間は平日午前8時~18時です。時間内にお掛け直しください。」と言われたことはありませんか。ぼくは何度もあります。どう考えても通信会社が悪い場合ですら日中しか電話がつながらないのは不思議なことです。36協定だか、労働法だか知りませんが、外形的基準を設けることは重要ですけど、とりあえず緊急の電話には出てほしい人が多いんじゃないかと思います。国民の税金で作った通信インフラという面もありますので。
電信電話・逓信というのは明治時代から国家の独占事業でしたから、どうしても大多数に合わせて廉価なサービスだけを目指すという方向は仕方ないと思います。でもそれが最適でないという少数派のお客さんも必ずいます。例えば研究機関や大人数が集まる施設、店舗や工場などでは廉価である事よりも、高速でありながら確実に動作する事も必要なはずです。もっと早く手に入れたい、困った時の連絡にはすぐ対応して欲しい、もうちょっと気を利かせて柔軟にやってよというお客さんの現場の声を私たちは直接聞いてきました。
人間偉くなるほど現場には出なくなりますから、その意味で現場と机の両方を見ているぼくたちは少数派なのかもしれません。具体的に行政(机の上)での対応の例を挙げると
・北海道の総合通信局で公道を占有するために必要な資格を取りに行ったら「北海道地区では文献が残る範囲では前例がない。ちょっと待ってほしい。」
・小樽市の保健所に合理的な理由を添えて駆け付け要件を超過した状態で申請したら「小樽市でそんなことを言っている人は他にいない。困ります。」
・北海道の国立大学に書類を申請しに行ったら(遠回しに)「今は昼休みであなたは私の気分を害したからダメだ。」
などと言われた事があります。残念ながらぼくにはビール券や商品券をあげる相手はいません(ビールプロデュース会社のスポンサーを個人的にはしていますがそれは別の話)。工学部の出身ですが、法律や根拠、解釈を確認して「ここにこう書いてあるじゃないか」「ping測定をしてみたら基準値と実測値が違う」「そもそもこの規定は日本国の方向性や法の目的と照らし合わせておかしい。このように変えるべきだ」とか言って最後は霞が関の役人と話合いをする。そして1~2年くらい問答して「確かに君の言うことは正しい」などということで、やっと認可が下りたり法律が変わったりして、以て川下からこの国の通信サービスを多様にするという事をしています。
通信大手が国内だけで営業し、ファッションでアルファベット4文字のようなキャンペーンを展開し、いつまでも5年後の未来を作っているようでは、日本が諸外国に太刀打ちすることは出来ません。技術研究と研究者教育に本腰を入れ、外資企業や国内食品メーカーのように外国でも事業を展開し、高速通信の研究や規格策定に対してもう少し真面目に取り組まねば日本の通信はいつまでも良くなりません。私たちは未だに明治時代の通信業界の役所仕事を変えて、この国を現代化したいと思っています。
3.インフラにスピードを
私たちの仕事は多数派向けではありません。お客さんに合わせて柔軟に、労働法に手足を縛られた企業を横目に24時間安定稼働を目指し(法律遵守には努めています)、目的を達するために下請け会社をあえて作らず、多重の下請け仕事を請けません。
私たちには信念があります。それは旧態依然とした業界や慣習を変革し、お客様のビジネスにスピードと便利さをもたらす事で、私たちの生活、そして我が国をも豊かにするという事です。
しかし、私たちが何かをやろうとすると、必ず否定してくる人がいます。絶対にいます。すぐに合理的根拠もなく「国民の税金で建てた局舎で自前工事をやってはならん」とか、「必ず○○が保証できる訳ではないだろう。だからダメだ」とか、「お前たちは既存サービスをちょっと改善しただけで全くイノベーティブじゃない」とか、揚げ足取りのようなことを言います。でも、これから社会を支えて行くのは机の前でふんぞり返っている全否定ジジイではないと思うのです。腕組みしているだけでは局舎は建ちません。陸運局の役人が屁理屈をこねくり回しても緊急自動車は速く走らないのです。
私たちの存在意義は、私たちが味わった社会の矛盾や理不尽、嫌だと感じた事を技術・数字・言葉の力で打破して少しずつ良い世界を創ることです。これは暴力的な革命とは違います。伝統的で古い業界で時代に適したことをやろう、これまでは一律「ダメ」と言われていたことを少しずつOKに変えて行くことが私たちの使命なのです。この考えを一言で表すのが「インフラにスピードを」という言葉です。
「いまさら固定電話かよ」「光回線ってどこも変わらないしよく分からない」とよく言われます。でもみんな、私たちのサービスを使うとまるで感想が変わります。「若いのに頑張ってるね」「全然違うね」「いまのシステムは全部御社に変えるよ」。これからもこういう感想を頂けるサービスを展開します。この会社は事業会社・メーカーとして個性を極め、まるで大海でのタンカーに対する川や湖での釣り船、あるいはサバンナでコアラが食べるユーカリの葉のように、少数派のニーズに応え、困り果てた人にそっと手を差し伸べられるような人の集まりとしたいと思っています。
日本先進通信株式会社
代表取締役 松浦求磨


